1990年1月 ベアタンク全盛とサンゴ水槽への憧れ

今から16年前のこのころ、1つのブームとしてベアタンクがあった。濾過効率(と言っても硝化作用までだが)をウェット&ドライ方式などで最大限にアップさせつつ、ひたすら水を替える。底砂を敷いてそこに嫌気的環境が生成することを嫌って、底面濾過以外では底砂も敷かない、というのが神奈川県を中心に広まりつつあった。ご他聞にもれず僕もその影響を受けていて、その様子が写真にも見れる。
もう1つのブームとして「無脊椎飼育」つまり今で言うリーフタンクだが、当時は高い効率の硝化濾過と水換えに頼った飼育法だったのと、照明器具が充実していなかったこと、クーラーが高値の花だったりしたことなどの影響で、せいぜいLPSを飼育するどまりであったが、まがりなりにも、「海を再現するレイアウト水槽」がはやりだった。それ以前の「単に海水魚を飼う」ということから見れば格段の進歩だ。その流れもあって僕も無脊椎水槽をいくつも立ち上げていた。
ミニ無脊椎水槽
水槽スペック
●普通の規格60cm水槽(60x36x30)
●写真から見ると、上部濾過と底面を併用しており、底面は直結とエアリフトの2本パイプが出ているようだ。
●となると必然的に照明は20w蛍光灯×2本だろう。(高演色系+ネオン色系)
●もちろんクーラーもスキマーも無し、もしかしたら3wの殺菌灯があったかもしれない。しかし何より、この底砂(三浦半島のあたりで採集してきた海砂)が非常に良く、今で言うライブサンドであって、これだけの効果でこの水槽は維持されていた。確か水換えは2週間に1回50%以上やってたと思う。

写真の出来の問題で妙に赤いが、これはスイスガードである。なみのキャンディ以上に美しく見える。

ライブロックの変わりにパイプオルガンコーラルが「でん」と鎮座している感じ。ロイヤルグラマとハタタテハゼ。右にNISSOのポンプ、左に上部濾過の排水口とエアリフトが見える。

非常に映りが悪いが、左はサンシャインクロミスだろう。右はベラの一種だと思うがもはや憶えてない。

イエローアセッサもいたようだ。なつかしい!
無脊椎水槽チャレンジ版
水槽スペック
●五反田の某氏から譲って頂いた90x45x40のガラスのOF水槽。奥行きが無い上にOFボックスが大きすぎることが、後々まで尾を引く。
●サンプ(濾過槽)には小豆大のサンゴ砂を敷いて底面フィルターを敷き、そこからポンプアップしている。今思えばそのままブレナムにしたほうがいくらか状態がよくなったと思うが、当時はそんなアイデアも知識も無かった。
●奥行きがないのとフチありガラス水槽でスペースが十分使えず、30w蛍光灯4本でやってたと思う。
●確か自作でアクリルのウールマットボックスを作っていたような気がする。当時は「無脊椎は新鮮な海水でないと飼えない」ということで、四六時中水換えしていたような。そんなに水換えるのなら、濾過なんていらないじゃん?くらいの勢いだ。しかし、サンゴ(LPS)にも餌を与えるのが当たり前の時代であったので、下手な魚水槽以上に水は劣化していたかもしれない。

水槽の右方向から。LPSだらけのショップの販売水槽みたいだ。ネオンドッティバックが見える。

水槽の左方向から。左端の馬鹿でかいOFボックスがレイアウト水槽にいかにも不適な感じがする。サンゴが飼えるとは思えない暗さだ。ネオンドッティバックはあまりにも性悪で、その結果ここに収まったはずだ。
海藻水槽チャレンジ版
水槽スペック
●傷物として安く売っていた90x45x45のアクリル水槽を購入。
●濾過はいささか変なことをしている。まあ言えば底面濾過なのだが、当時全盛だった淡水の水草レイアウト水槽の作り方にヒントを得て40πくらいの塩ビ管に穴をあけ、前後をふさいで底面濾過のようなものにし、水槽の背後に置き、その手前にアクリル板を置いて、水槽の後ろ半分だけが15cmくらいの砂厚になっていて、正面はほどほどに砂が敷いてあって濾過はない。海藻だけではボリュームが出ないためにそんなことをしているのだが・・・もちろん濾過能力は全然ダメで、海藻の力で飼育していた感じだ。
●わずか5センチの差とはいえ、サンゴ水槽とは全然奥行きが違うため、逆にすればよかった、と最初から思っていた。
●濾過が全然だめでも海藻がこれだけ繁茂すると、水換えの必要は激減した。そのかわり2週に1回は海藻を間引きしないとたちまちジャングルになって光も差さなくなってしまう。照明は当時流行の「パルック」で、海藻の繁茂には一番適していた。

紅海産のレッドバックバタフライ、イエローコリス、シマヤッコ、レッドシークリーナーラスなどがいる。もう完全に雑誌の影響だ。シマヤッコは最初からフレークを食べているのをつれてきたが、海藻を主食にしていたような気がする。写真は、おそらく海藻の間引き直後だと思われる。普段は海藻だらけでこんなに見通しが良くなかった。

水槽の全体。濾過能力不足なのでアホみたいにエアレーションしているが、案外これがナチュラルシステムに近い状況になっていた。右端にカタリナゴビーがいる。
ベアタンクの魚専用水槽
水槽スペック
●ボーナスを全部はたいた120x45x60水槽。生物飼育には奥行きが必要だ、ということで鑑賞性を犠牲にした奥行き重視のOF水槽。
●濾過は当時の世相を反映してウェットドライ。かなり大きな小石サイズのサンゴ砂(砂利)を濾材にしており、実質的には嫌気的濾過も内部では行われていたようだ。なので硝酸塩(NO3)で試薬が真っ赤、という経験はしたことがなかった。
●照明は現時点では20w x12本で240w。全部点灯すると、部屋の照明が不要なくらい明るかったという覚えがあるが、のちにさらに4本追加して320wとなる。熱を持ちにくい蛍光灯ですら、ここまで来ると相当な発熱だった。

当時紅海産の魚は珍重されており、ゴールデンバタフライ、紅海産ニシキヤッコが主役だ。クリスマス島産フレームエンゼル、スリランカ産キンギョハナダイなどもいる。そして定番・デバスズメ。

シテンチョウチョウウオ、シェブロンタン、パープルクイーン、オニハタタテダイなども見える。食事はきざみアサリ。しかしこの、ベアタンクに飾りサンゴというのは、どうもショップの水槽を彷彿する。
意味不明の扁平水槽
水槽スペック
●90x25x45という特殊な扁平アクリル水槽。当時大変お世話になったTさんから貰った。「上から見る水槽を作りたい」ということで作ったものらしいが、Tさんは車椅子の方なので、このようあ高さのものになったようだ。しかしあんまり変わったものを作ると、いずれ持て余すことが多いのだ。この水槽の、結局水槽として機能していたのはわずかな期間であり、のちに自作OF水槽のサンプとなる。
●こういういびつな水槽なのと、海藻水槽との2段の水槽台の下に置いたことなどの理由により、濾過システムが非常に限定される。確か底面濾過のみで、エアリフトとNISSOの揚水ポンプの2段がまえだった。
●キサンゴ類など陰日性や光を必要としないサンゴばかりの水槽だったので、照明は20w蛍光灯を1本上から吊るしただけ。
●水槽の高さが低いので給餌しやすい、などと言って作ったが、結局まともに鑑賞に堪えないということと、実質魚の入らないサンゴだけの水槽になるということで、このかたちでの寿命は短かった。だいいちシャコガイとかならわかるが、イボヤギを上から見ても別に面白くない?

フラッシュを焚いても光が届かない・・・近海のイボヤギ、エダイボヤギ、ハナタテサンゴ、ウチウラタコアシサンゴなどが見える。

餌はまめに与えていたので、それなりにポリプは開いている。もちろんこの写真は明るいときに撮っているので、夜間はもうちょっと開く。当時はすべてのサンゴに給餌していたのであまり気にならなかったが、SPSにもLPSにも給餌しない現在、キサンゴの世話する根性はないかも。
こうやって振り返ってみると、本当に赤面ものだ。名ばかりの濾過システムとか、アイデア先行で実行性のない「水草水槽型システム」とか、どう見てもショップの販売水槽にしか見えないベアタンクとか・・・
ただ当時の流行に刺激され、サンゴと魚を自然な感じで泳がせたい、ということをひたすら考えつつ、あれやこれや試行錯誤していたのだろう。機材などにはあまりお金がかけられなかったことも、「何とか自作で」みたいな気持ちにつながっていたのだとは思う。設備は限られているので、そのなかでなんとか工夫しようとしていたのだ。

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